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来し方行く末を記します。

『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第4063号☆


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 『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)☆第4063号☆
                  2017年9月 4日:月曜日発行
   編集・発行 梶原末廣      sukaji@po.synapse.ne.jp
  http://www.synapse.ne.jp/~kanoyu/sukaji/index.html
http://www.synapse.ne.jp/~kanoyu/kyoushi/index.html
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■「映画の中の先生たち」(29)木原ひろしげ(福岡県)
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【連載】


■「映画の中の先生たち」(29)

   木原ひろしげ(福岡県)


◆『奇跡がくれた数式』の「ハーディ先生」

2015年にイギリスで製作された伝記映画、原題は『The Man Who Knew Infinity』。

主人公・ラマヌジャンは天才的なひらめきor直観によって様々な数学の定理を
発見する。しかし、20世紀前半のイギリス領インド帝国でのことで、学会で認
められるためには、まるで環境が異なるケンブリッジに留学せねばならない。

もう一方の主人公、ケンブリッジ大学のハーディ氏は、そんなラマヌジャン
受け容れ、対峙しながら、面倒を見てくれる学会の重鎮。やがて数学のみなら
ず、人生観に至るまで、最大の理解者となり友人になる。

この師・弟関係は通常と異なる。師より弟の方が進んでいるという教・習逆転
の関係だ。弟のひらめきに師が追いつくのに精いっぱい。「発見」された数式
の「証明」を手伝うことしかできない。留学生ラマヌジャンには、定理は「神
様から教えられた」ものであり「ひらめき」であって、「創造物ではない」と
いう。だから証明とか説明はできないという。これが、科学者であり無神論
であるハーディ先生には理解できない。科学的に学会で認められるためには証
明を重ねて「創造物」にせねばならぬ、この点でのみハーディ氏は、師であり
先生だった。

ところで、こういう師弟逆転の関係というのはケンブリッジに限らずどこにで
もある。日常的にある。学校にもある。子どもたちはひらめきによって分かっ
ている(見えている)のに、先生の方がよく分かっていない。

例えば国語文芸 ―― 子どもは鑑賞者であって、直観的に理解なり共感をす
る。先生は子どもたちに感想を言わせ、説明をさせる。説明をせよと言われて
も、「ひらめきです」としか言いようがないものを、説明不十分では先生から
認められない。元々、原作者が読者に求めているのは、先生が求めているよう
な説明的なものではなかろうのに、無粋な先生の説明によって、作品は味気な
い教材になり下がってしまう。

例えば美術 ―― 私の場合、子どもの絵の良さが分からない。これに評価を
しなければならないのだから、これにはお手上げだった。子どもが傷つかない
範囲で何とかかんとかごまかした(多くの場合、得意の先生にお願いした)。
今思うに、個々の作品への評価について説明を求められたらどうしたのだろう。
幸い(かどうか)にも、そういうことが無くて助かった。

例えば畑学習 ―― 退職して畑仕事に興じる毎日だが、ご近所や同好者との
話の中で、「野菜作りがどうして面白いのか」と聞かれることがあって、これ
は答えに窮する。説明のしようがないからだ。同好者同士では、農事に関して
色んな主張や手法があって、喧嘩になることもある。説明が不十分であったり、
間違いがあったりするからだ。これには、年齢や経験や立場の序列がなくて、
さながらメダカの学校だ。「誰が生徒か先生か」分からない。畑はそういう所
だ。

さて、映画の中のハーディ先生だが、無神論者でありながら生徒ラマヌジャン
の「神様から教えられる」ことにも(一理有る、と?)理解を示し、異教徒の
信仰にも(一理有る、と?)寛容になり、数式を通しての師弟関係がやがて、
友情関係に変質し、深化する。当時の英―印関係や、閉鎖的な学会(フェロー)
の事情を考えれば、あり得ないことだった。師・ハーディの人生が変わる。天
才的な人たち(科学者であれ、芸術家であれ)によく見られる対人関係不適応
症候群??からも脱出できそう。

それなのに、留学生ラマヌジャンの方が学会不適応症を発症し、早逝してしま
う。何ということだ。残念ながらメダカの学校の私などには彼の数学定理はお
よそ理解が及ばない。ただ、私の畑にも、「神様から教えられた」「ひらめき」
としかいいようのない未証明の事柄がいっぱいあって、それを無理して証明・
説明しなくてもいいじゃないか、と、そんなことを思う。神様から「教えられ
た」というのは、おそらく「与えられた」ということなのだろう。努力してGET
した「創造物」ではない、ということだろう。

夏休み、小学二年生の孫が殆んど毎日うちの畑にやって来た。彼との農作業中
の会話に、ハッとすること、ギョッとすること、「子どもから教えられる」こ
との連続だったが、いちいち書き留める時間がないのが惜しい40日だった。
ま、いいじゃないか。無理して記録も証明も説明も、そういう努力も必要なか
ろう。ここは学会ではない、メダカの学校だ。


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===編集日記=== 

  皆様に支えられて「日刊・中高MM」第4063号です。

 木原ひろしげ氏の「映画の中の先生たち」、お届けします。
 ・『奇跡がくれた数式』の「ハーディ先生」

  ・メダカの学校 は、愉しい感じですね。
 よく昔から雀の学校かめだかの学校って揶揄される言説は
 あった。鞭をふりふりよりもダーレガ生徒か先生かの方が
 少しは分がある。もっとおおらかに子供が育つ環境を構築
 したい。
 
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       皆様のご意見・ご感想お待ちしています。
       sukaji@po.synapse.ne.jp
       梶原末廣【インターネット編集長】
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【9月】

05 「沖縄ものしりクイズ100問」(11)蔵満逸司(沖縄県)  
   「なにかが見える、描こうということ」(6)岡崎あかね(大阪府
06 「僕らはみんな生きている」(136)杉山武子(鹿児島)
07【新連載】未定(募集中) 「朗読Cafeネットワーク」(3)梶原末廣(鹿児島)
08 「ここから見える未来教育」(9)梶原末廣(鹿児島)
   「学校英語と実用英語」(15)浜田 雅暢(鹿児島) 
09 「想いは南風に乗せて-あなたの心に」(67)堂園晴彦(鹿児島県)
10【休刊】 
11 「環境問題について」(196)枝廣淳子(千葉県)
12 「教師前途」(7)梶原末廣(鹿児島)
13 「鈴木敏恵の未来教育インフォメーション」(10)鈴木敏恵
  【復刊】「新 教育をみつめて」(51)土橋英光(大阪府) 
14 「南薩摩の風」~南薩の田舎暮らし~(16)窪 壮一朗(鹿児島) 
15 「教師教育今昔」(2)梶原末廣(鹿児島)
16 「百菜園便り」(77)木原ひろしげ(福岡県)
17【休刊】 
18 「特別支援教育の在り方」(18)吉田博子(東京都)
   「ヒサシは歩くよ何処までも」(28)大岩根 尚(鹿児島) 
19 「総合学習回顧録ー小学生ママと総合学習」(99)名生修子(兵庫県
20 「プロジェクト志向でいこう!」(105)若槻徹(島根県
21 「島に、生きる。」(82)山下賢太(鹿児島)
22 「立ち止まってメモしたことを」(18)北原妙子(熊本県) 
23 「子どもの頑張りを認めてくれる先生」(28)城ヶ崎滋雄(千葉県) 
24【休刊】 
25 「教育への道~グローカルアカデミー~」(16)岡本尚也(鹿児島県)
26 「ファシリテーション・グラフィックをはじめよう」(16) 藤原友和(北海道)
27 「僕らはみんな生きている」(137)杉山武子(鹿児島)  
28【新連載】「旅をする本」丸山 晃(鹿児島)
29 「学びが深まるアクティブラーニング(AL)の授業設計」(22)水野正朗(愛知県)
30 「子どもたちのわくわくアート」(131) 西尾環(熊本県


【10月】

01【休刊】
02 「映画の中の先生たち」(30)木原ひろしげ(福岡県) 
03 「なにかが見える、描こうということ」(7)岡崎あかね(大阪府
04 「学校英語と実用英語」(16)浜田 雅暢(鹿児島)
05 「沖縄ものしりクイズ100問」(12)蔵満逸司(沖縄県)  
06 「僕らはみんな生きている」(138)杉山武子(鹿児島)
07【休刊】
08 「ここから見える未来教育」(10)梶原末廣(鹿児島)
09 「想いは南風に乗せて-あなたの心に」(68)堂園晴彦(鹿児島県)
10【新連載】未定(募集中) 「朗読Cafeネットワーク」(4)梶原末廣(鹿児島) 
11 「環境問題について」(197)枝廣淳子(千葉県)
12 「教師前途」(8)梶原末廣(鹿児島)
13 「鈴木敏恵の未来教育インフォメーション」(11)鈴木敏恵
  【復刊】「新 教育をみつめて」(52)土橋英光(大阪府) 
14【休刊】
15 「教師教育今昔」(3)梶原末廣(鹿児島)


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   「教師のための働き方マネジメント」(2)長瀬拓也(京都府
   「スイスで先生~生物学教師になるまで」(40)ブランド那由多(スイス) 
   「森知子の旅と本」(3)森知子(スペイン)
   「生徒へ送る心のメッセージ~教師のための新しい視点~」(66)
                 桑原規歌(愛知県) 
   「葦の髄から」(18)梶原末廣(鹿児島)
   「東北の春」(4)梶原末廣(鹿児島)    
【休刊中】「雑感・相手の立場 」(47) 西澤俊英(滋賀県
    「リフレクションの探求と実践」(13)中島 久樹(東京都)
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